Kappa Complex

河童複合 Kappa Complex (2007)
河童体験情報を集め、その情報に基づいて現代の河童像を作るプロジェクト。河童目撃者の証言や、目撃者によって描かれた絵、河童に関する遺物などとともに、河童と呼ばれたことのある者をも「河童体験者」とみなし、得られた情報を河童像に合成し、視覚化していく。おもに動画と彫刻から構成されている。鎖国時代の河童体験者の聞き書き本「河童聞合」(1805年頃)、及び当時の河童研究書「水虎考略」(1820年)、の方法論を引用、現代の状況の中で模倣している。
このプロジェクトは、2007年、茨城県守谷市、ARCUS Projectでの滞在制作活動である。茨城県は河川、湖沼などの水環境が豊富な土地である。そのような地域の自然環境が人々の想像力を刺激し、水棲生物の一種である河童伝説が豊富に生み出された理由の1つとなっていると思われる。 伝統的な河童像についてはページ下部に記述した。

 

水辺の人々のための作品 Work for Water People
2007
キュウリ、紐、ポリウレタンフォーム
23×7.5×10cm(長さ×高さ×奥行)
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見えない水かき Unseen Web
2007
45秒の動画
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指を高速に動かすことで、指の間に残像が残る。その残像が水かきに見えるのかもしれない。

 

河童がいない。 Kappa ga Inai.
2007
A5、チラシ、3000部
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このようなフライヤーを制作し、河童体験情報を募った。

 

河童複合のための素描 Sketches for Kappa Complex
2007
モーフィング動画
3分53秒、DVD

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映像作品「Sketches for Kappa Complex」で、集められた河童の視覚イメージは、モーフィング技術によって順次合成されていく。上の図では、時間は左から右へと進行する。10個の河童情報が寄せられたため、合成は10段階に分かれている。右下の河童像が最終的なイメージとなった。

 

現代河童聞合(げんだいかっぱききあわせ) Hearing about Kappa
2007
ドキュメント動画
105分、DVD、英語字幕
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映像作品「Hearing about Kappa」は、河童体験者への取材を記録したドキュメントである。河童の足跡を見つけた 2 人の少年、子供の頃に見た河童について真剣に語る大人たち、河童の右手のミイラ、河童呼ばわりされたことのある男性、自分の手に水かきを想像して絵に描くワークショップの模様、県知事への河童質問、老婆による河童伝説、河童池で遊ぶ子供たち、など単に目撃情報を集めただけにとどまらない内容となっている。寄せられた河童情報は検証・分析などされず、ありのままの姿で示される。

 

ワークショップおえかきあそび「見えない水かき」 Workshop for children, “Unseen Web”
2007年10月21日
アーカスプロジェクト・レジデンスプログラムの一環として催されたワークショップ
場所:守谷市中央公民館/守谷市主催・市民フェス「彩都ピア守谷」にて
内容:自分の手の「水かき」を想像して描く
対象:児童
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河童は海の向こう Kappa Far Beyond the Sea
2007
インスタレーション
一連の彫刻作品の他、写真、原画などの資料、布、厚紙、セロファン、 ビデオプロジェクター、ビニールプール、泥、水、鯉、ススキ
グループ展「オープンスタジオ」
アーカススタジオ、茨城県守谷市
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滞在制作の発表展。合成により生み出された河童像の彫刻や映像作品などが展示されている。部屋の窓をオレンジ色の布で覆い、独特の光環境を作り出している。これは、「河童は夕暮れ時に多く出没する」という茨城県の河童伝承に基づき、夕暮れ時のような光を表現しているもの。

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Kappa Complex A (Head)
2007
石膏に着彩、ビニールプール、水、泥
58×55×41cm(頭部), 220×220×40cm(水槽)kc8
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足跡を発見した二人の少年が想像で描いた河童像の合成画像を立体化した造形作品。

 

21世紀の河童像(頭部)合成原画(左)を立体化したもの(右)
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河童について

「河童とは我々人間自身のことだよ。」 関口鉄夫(牛久市観光アドヴァイザー)

河童は古くから日本全国に分布し、川・沼などの水辺に住む小型の妖怪である。地域によって容姿、性質、呼び名は異なるが、典型的な河童の身体特徴は、人間の子供ほどの体格で身体全体がぬるぬるしており、頭に皿と呼ばれるくぼみ、頭髪は放射状、口はくちばし状、背中に甲羅、手足の指の間に水かき、を持つとされる。泳ぎが得意で、キュウリを好んで食べ、畑の野菜を盗む、人間の子供や馬を川に引きずり込み溺死させる、女性に痴漢・強姦を働く、人間に際限なく相撲を挑み続ける、などの行動をとる。説話では、最後には人間に捕らえられて許しを請い、許してもらったお礼に秘伝薬や新鮮な魚を贈る、という結末が多い。研究家によれば、現在知られている河童の典型的なイメージは、鎖国時代の18世紀末に、それまでの伝説・噂話・目撃談・体験談など複数の異なる情報起源を、本草家(当時の博物学者)らが統合し成立したと言われている。
以下に河童のイメージの基になっているものを列挙する。

神話的要素:蛇、竜、ワニ(怪魚)など、東洋の水神
動物的要素:猿、カワウソ、スッポン、カメ、タヌキ、キツネ、カエル、イヌ、ネコ
人的要素:水死した子供、奇形児、被差別民、流浪民、キリシタン宣教師、山人、落武者、わら人形

 

河童は海にもいる Kappas Also Live in the Sea
2007
インスタレーション
彫刻:Kappa Complex A, B, C
石膏に着彩、ビニールプール、水、泥、ウェットスーツ、粘土に着彩、ススキ、雑草、土
ドキュメント動画:現代河童聞合(げんだいかっぱききあわせ)
105 分、DVD、DVD プレーヤー、モニタ
写真、原画などの資料、布、厚紙、セロファン
グループ展「Playroom Opening Exhibition」
遊戯室、水戸
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KAPPA ABC DVD
2008
DVD media
Cover drawing by Tomoyuki Nemoto
Contents:
1. Hearing about Kappa (105 minutes, English subtitles)
2. Sketches for Kappa Complex (3minutes 53 seconds)
3. Extra photos
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河童複合で制作した動画をまとめたもの。英語字幕付き。