Urato Drift 2007

浦戸漂泊 Urato Drift (2007‐ )

日本人初の世界一周者である仙台藩出身の船乗りを囲み、地元で音楽と芸術を通して祝福するビーチパーティを開催するプロジェクト。船乗りたちは、200年ほど前の鎖国時代、嵐に会って遭難し、漂流の末、図らずも世界一周してしまった4人の日本人である。このビーチイベントの会場となるのは、津太夫(つだゆう)を初めとする彼ら漂流民の故郷である宮城県の浦戸諸島。静かで時間のゆったり流れる島である。おもに仙台周辺を活動の場とする15組以上のDJ、演奏家、バンドなどがこのプロジェクトに賛同し参加した。椎名が、このイベントのディレクターとして企図したことは、死んでしまってもうこの世にいない人やまだ一度も会ったことのない人と、人々はどのようにかして何かを共有することが できるだろうか、ということだった。鎖国時代の漂流民が世界一周し故郷に戻ってくるまでの期間と同じく、このイベントも当初は13年間毎年夏に浦戸諸島で開催される計画であった。

椎名が企画した2007年のこのイベントの目玉は、大きさ9m×7mの運搬船の上に音響機材をセットし、電子音楽のライブを行うというもの(下方のドローイング参照)。オーディエンスも浮き輪などで海に浮かびながら音楽を鑑賞する。しかし、ちょうどその週末に台風が接近し、船上ライブは残念ながら中止となってしまった。歴史は繰り返される。私たちのパーティーも漂流を開始したようだった。2007年には、10人以上のDJ、3組のアコースティック・グループ、3人の美術家が参加し、200人近くの観客があった。すべて無料のフリーパーティーだった。

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A Day
2007
紙に鉛筆、水彩
351×241mm
Urato Drift 2007 のためのプラン・ドローイング
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A Night
2007
紙に鉛筆、水彩
351×241mm
Urato Drift 2007 のためのプラン・ドローイング
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Urato Drift 2007 フライヤー/A4、デザイン:根朋子、ディレクション:椎名勇仁
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Poster of Urato Drift 2007 ポスター/A2、デザイン:根朋子、ディレクション:椎名勇仁
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上の2つの画像は、Urato Drift 2007のフライヤーとポスターである。全身入れ墨の人物像は、南太平洋マルケサス諸島に住む人々の様子。津太夫(つだゆう)ら漂流民が日本への帰路に立ち寄った当時の風俗である。大槻玄沢が仙台藩から依頼されて漂流民に事情聴取した際の世界一周公式漂流記録『環海異聞』(1807年成立、宮城県図書館収蔵)に載っている原図を使用している。デザインを根朋子が担当。

 

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日没後の海の家とDJブース。

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電子音と波の音を同時に聞く。波打ち際にて。