I could not kill a deer in this summer

この夏私は鹿を仕留めることができなかった    I could not kill a deer in this summer
2002
氷、透明樹脂、アザラシの毛皮の手袋、大型尖頭器(羽帯出土)複製、石器の実測図、石膏型、映像(30分)、エポキシ樹脂、シリコンゴム、パラフィン、針金、テグス、映像再生装置一式
糠平ダム、北海道
氷槍:φ 4×220cm
「デメーテル関連企画」
ホシビル、帯広、北海道
協力:帯広百年記念館、とかちフリーズ、佐藤弥恵、デメーテル事務局、進藤冬華、岡和田

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「氷河時代における氷器説」を検証する。

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氷槍をかかげて全力で鹿を追う。

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氷槍のしずくが、地面に残る鹿の足跡に落ちる。

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氷槍の複製品。

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刃先は、同地方で実際に出土した石器の形態に基づいている。

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アザラシの毛皮の手袋。

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氷槍の型。

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モデルになった石器の複製と実測図。

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北海道で出土されるおびただしい数の打製石器群。中でも尖頭器と呼ばれるタイプの石器の刃先の鋭利な形態。その美しさは猟具としての殺傷能力の高さに由来していると思われた。私は十勝地方羽帯で出土した大型尖頭器を基に槍を制作し、同地方に多数生息するエゾシカを狩りに行き、石器の美しさを追体験しようとした。この夏それができなかったのは、エゾシカには条例によって猟期が定められており、それが冬の間だけだったからだ。

鋭利な石器を駆使した旧石器人も、冬季には地面が凍った雪に覆われて、石器を作るための石材を手に入れることが困難だったに違いない。そんなとき彼らは豊富にある氷を道具として利用した。彼らは「氷器」を使用するために、体温を遮蔽し、濡れても凍結しないアザラシの毛皮の手袋をはめて、エゾシカを仕留めようとした。この夏それができなかったのは、獲物に近付く前に氷器が溶けてしまったからだ。
もう少し涼しくなれば、何もかもうまくいくだろう。

(2002年記述)

 

 

I could not kill a deer in this summer
(2002)
30 minutes / DVD
■2007.09
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2007年にDVD化。